岡山県視覚障害者協会の広報誌を掲示しています。

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岡星寮
岡山県視覚障害者センター

視覚障害者センターだより 平成28年(2016年)6月(通巻309号)

視覚障害者センターだより ~ロバと五つのにんじん~

平成28年6月(通巻309号)

発行 岡山県視覚障害者センター

郵便番号 700-0927 岡山市北区西古松268-1
電話 086-244-1121
FAX 086-244-1043
Eメール ossfc@nifty.com


 声の欄は随時募集しています。

 内容とその形式は問いませんが、ワープロやエディタのデータ、あるいはメールが可能な方は、これらでいただければ大変助かります。
 皆さまからの原稿をお待ちしています。
 読み始めたら途中でやめられなかった面白い本、おいしかった飲食店、便利グッズ、趣味など何でもけっこうですので、ぜひ声の欄に原稿をお寄せください。


 センター便りは、ほぼ同文のものをセンターの点訳・音訳奉仕員に配布しています。
 「声」欄の内容を奉仕員にもお届けすることになりますので、ご了承ください。

 
今月の内容 

お知らせ(5件)

・27年度利用者アンケート結果分析その2 サピエ図書館

・五感で楽しむ旅の企画運営をしているコムツアーをご存知ですか。

・大震災に備えて心がけておきたいこと 

・4月28日から、岡山駅東口広場のバス乗り場が変わっています。

・PCVOL・OPKの紹介と例会日のお知らせ

・どうしてますか交流会の案内

・声 邪馬台国論争 1/2

・新刊案内をお伝えします。

 

《 お知らせ 》

1.2016年7月の休館日と図書整理日

  休館日は毎週火曜日と18日(月)の海の日です。
  図書整理日は28日の第4木曜日です。
  この日は終日留守番電話対応とさせていただきます。


2.初心者対象音声パソコン講座のご案内

  今年度も視覚障害者を対象にした音声パソコン初心者講座を実施します。
  今年も、受講される方の時間に合わせる形式のみとします。
  原則4日間、1日3時間、延べ時間は12時間の講座になります。
  センターの開館時間が9時~17時のため、最も遅い場合でも、17時には終了します。
  講座を受けてみようと思われる方は、ご連絡ください。
  講座日はその後話し合いながら調整します。


3.白杖(直杖)を作っていただけます。

  多くの方々からご希望があり、沢山作っていただきました。
  最近は依頼数がはじめのころに比べると少なくなってきています。
  一度作っていただいたので、もう希望はできないのではないかと思っておられる方はおられませんか。
  2本目3本目も大丈夫ですよ。
 
  白杖の長さを利用者の身長に合わせて作っていただけます。
  身長マイナス40~45センチメートルが標準のようですが、ご希望の長さのものを作っていただけます。
  ただし最も長いものでも131センチメートルです。
  これ以下であればその長さは自由がききます。
 
  この杖は、ゴルフクラブの不要になったものを再利用して作成するものです。
  カーボンシャフトなので非常に軽く、また丈夫です。
 
  いしづき部分は、金属かゴムの選択が可能です。
 
  上記の身長に合わせる杖をご希望の方はセンターまでお知らせください。
  杖の作成には約2週間お時間をいただきます。
 
  杖は無料で差し上げますが、センターまで受け取りに来てくださればと思います。
  来館が難しい方には郵送しますが、送料の実費が必要となります。

 

4.パンフレット類のご案内
 
  パンフレット類(7種類)をご案内しますので、ご希望の方はセンターまでご連絡ください。
 
  特に記載のないものは、貸出でのご利用になります。
  返却期限は資料が届いてからお手元に2週間です。
 
  「くらしの豆知識 2016年版」デイジー11時間40分。
  コピーの上、希望者全員にさしあげます。
  国民生活センター発行。
 
  「厚生労働白書 平成27年度版 人口減少社会を考える」デイジー8時間16分、カセット6巻
 
  「障害者白書 平成27年度版」デイジー8時間27分、カセット6巻
 
  「出会い、ふれあい、心の輪 完全参加と平等 平成27年度入賞作品集」点字1巻。内閣府発行。
 
  「オンキョー世界点字作文コンクール入選作品集 第13回2015」点字1巻。墨字併記。
 
  「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師国家試験試験問題(解答添付) 第24回」点字1巻
 
  「司法書士について」点字6ページ。日本司法書士会連合会発行。

 

5.今月の新刊書に関するお知らせ

  今月の新刊としてご案内している「みんなに役立つバリアフリー・ユニバーサルデザイン」(点字1巻)ですが、4部までさしあげることができますので、ご希望の方はご連絡ください。
  同じ内容の活字がいっしょに綴じてあります。

《 27年度利用者アンケート結果分析その2 サピエ図書館 》

 現在提供しているサービスのうち、最も高い評価を得たのは、サピエ図書館でした。
 その値は4.5でした。
 この最も評価の高かったサピエ図書館が、4月28日から5月17日の間、全面的に休止していました。
 再開後のトラブルを心配していたのですが、大きなトラブルはありませんでした。
 全国の点字図書館もほっとしたところです。
 皆さんご協力ありがとうございました。

 ちょっと前まで、コンテンツ数が点字が16万、音声デイジーが6万といわれていましたが、全国の点訳・音訳ボランティアの方々が頑張ってくださり、その数が、最近では、点字データが176,767。
 音声デイジーが71,002(内、シネマ・デイジー212)、テキストデイジー2,773、マルチメディアデイジー99にも達していました。
 
 また、ダウンロード数(27年4月~28年3月累計)は、点字データが740,445、音声デイジーが2,823,859、シネマデイジーが110,203、テキストデイジーが161,201、マルチメディアデイジーが3,122でした。
 まだご利用されておられない方、その気になれば、皆さんの読書環境は劇的に変りますよ。
 
 ちなみに全国の個人会員数は、14,380名でした。
 
 皆さんもサピエの個人会員になられ、自宅で、様々な本をダウンロードし、読書環境を改善されませんか。
 
 センターでの代理登録も可能です。
 会員登録も無料です。
 
 サピエ図書館の体験はセンターでできます。
 思っておられるより、ずっと簡単に使えると思います。
 一度は体験してみませんか。
 体験ご希望の方はセンターまでご連絡ください。


  
《 五感で楽しむ旅の企画運営をしているコムツアーをご存知ですか。 》

 アンケートの回答にセンターで日帰り旅行を計画して欲しいとの要望がありましたが、現在のところ対応は困難です。
 また、旅行の情報などが欲しいとの要望もありました。
 こちらは可能なので、さっそくご紹介します。
 
 センターの川田です。
 旅の最も楽しみの一つは景色を見ることですが、重度の視覚障害があると景色は残念ながら楽しめませんよね。
 そこで、視覚以外の感覚で旅ができれば楽しいだろうなと思います。
 そんな旅を提供してくれているのが、「コムツアー」です。

 私はここ3年、年1回ツアーに参加しました。
 その感想は、毎回時間に余裕のある旅で、特に色々触れることのできる内容があり、「一触は百聞にしかず」だなと感じています。
 撞木鮫(Hammerhead shark)などは、獰猛で生体の観察は不可能ですが、昨年訪れた盛岡の「桜井記念視覚障がい者のための手でみる博物館」では、この剥製があり、なぜハンマーヘッドという名前がついているのか、触ってすぐ分りました。
 頭の形がハンマーそのものでした。

 現在コムツアーからメールで旅行名:第119弾は五感で楽しむ、杜の都・仙台、松島&船旅(北海道・根室)の案内が届いています。

 メールの転送ができますので、転送ご希望の方は、メールでお申し込みください。
 案内が届くごとに転送させていただきます。

 また、この案内は点字JBニュースでも提供されています。
 この期に点字JBニュースを新しく読んでみようと思われる方はご連絡ください。

 現在参加者を募集している五感で楽しむ、杜の都・仙台、松島&船旅(北海道・根室)の概要
 
旅行期間:2016年7月25日(月)から7月29日(金)までの5日間
  概算旅行代金: 200,000円(3名様1室利用の1名様料金)
  概算旅行代金: 228,000円(2名様1室利用の1名様料金)
  旅行申込締切日:2016年7月5日(火)

 五感で楽しむ旅、第119弾は、杜の都・仙台と日本三景・松島&にっぽん丸、北海道・根室クルーズです。

 仙台では、シンボルロードの「定弾寺通(じょうぜんじどおり)」の散策、伊達政宗が眠る「瑞鳳殿」や仙台城址などを訪れ旧伊達伯爵邸「鐘景閣」での昼食(牛タン御膳)もご用意。
 また、名物の笹かま作り体験にも挑戦します。
 
 日本三景のひとつ、松島では松島湾の遊覧をはじめ、国宝の瑞厳寺や円通院、五大堂などの陸の松島も楽しみます。

 今回のにっぽん丸では、仙台港から日本最東端・根室までのクルーズを楽しみます。

 にっぽん丸は、まさに海上リゾート。
 航海中の移動時間こそが船旅の醍醐味です。
 
 シェフが腕によりをかけた自慢の食事や豪華ゲストのメインショーをはじめ船内イベントがいっぱいで、暇を持て余す事がありません。
 寄港地の根室では花咲ガニの鉄砲汁の試食や知床峠までの無料バスも運行。
 皆さまを、おもてなし!
 
 その他、日本で最初の日の出を見るなど、日本最東端ならではのオプショナルツアーを数々ご用意してあります。

 ◎視力障がいをお持ちのお客様は、介護者同伴を原則とさせていただきますが単独行動可能な方はお1人でのご参加も可能です。
 視覚障がい者単独での参加希望で尚且つ、手引きを弊社にて付ける場合は別途95,000円の追加料金にてご参加いただけます。
 ただし、同行ボランティア(ウィズコム・メンバー)の人数の関係によりお引き受けできない場合もございますので単独参加希望の方はお早めにご相談ください。

《 大震災に備えて心がけておきたいこと 》
 
 平成7年の阪神淡路大震災から平成28年までの21年間に、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本・大分地震と大きな被害を出した地震が4つもありました。

 今回被災地の視覚障害者の支援のため、地震発生後4日目の4月18日には支援が始まったとのことです。

 直後は組織的な援助は期待できそうにありません。

 皆さんお住いの避難所はご存知ですか。
 そこへの道順は知っていますか。
 また、単独ででもそこへ行けますか。

 東日本大震災では、援助に行った警察官・消防士・消防団員が多数お亡くなりになりました。
 このことがあり、震災発生直後は、支援者も自分達の安全を確保することが最優先になっており、自分の命は自分で助ける自助努力が原則のようです。

 地域で催される避難訓練に、町内会の近隣の人と参加されたことがあるでしょうか。
 積極的に訓練に参加し、近隣の方とは普段からコミュニケーションをとっておくことが大事とのことです。

 皆さんの中で、震災に備え、避難訓練に参加された方がおられるでしょうか。
 おられれば、その体験談は多くの仲間の役に立つと思いますので、「声」の欄に原稿を寄せていただければありがたく思います。

 サピエ図書館のデイジー図書に、日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会発行の『みんなで知っ得「助かる」「助ける」増補版、視覚障害者のための防災対策マニュアル』が登録されています。
 大変参考になる内容でした。

《 4月28日から、岡山駅東口広場のバス乗り場が変わっています。 》

 県庁方面へ行く人は、9番・10番・11番から、法界院駅前方面へ行く人は、12番・13番乗り場をご利用ください。

 今回の乗り場変更で、あわせてほかのバス乗り場も変更になりましたので、ご注意ください。

 4月28日(木)から岡山駅東口広場のバス乗り場が方面別に変わっています。

 問い合わせ先 交通政策課 086-803-1374 
岡山県バス協会 086-259-5582
  http://www.city.okayama.jp/toshi/gairokoutsuu/index.html

 新しいのりばと方面は次の通りです。

 センターに来館される場合は、4番の健康づくり財団、5番の大元駅前・汗入・児島駅方面をご利用ください。

 1番のりば 岡電バス

天満屋・新岡山港・藤原団地 

 2番のりば 両備・岡電バス

天満屋・日赤・玉野市・岡南飛行場・築港元町 

 3番のりば 岡電バス

天満屋・市役所・労災病院・大東・岡南・日赤 

 4番のりば 岡電バス

市役所・北長瀬駅・新保万倍・大学病院・健康づくり財団 

 5番のりば 両備・岡電・下電バス

天満屋・中庄駅・鉄工センター・市役所・大元駅前・汗入・児島駅 

 6番のりば 中鉄・備北バス

芳賀佐山団地・リサーチパーク・吉備高原・足守・高梁市 

 7番のりば 岡電・中鉄バス

国立病院・津高・免許センター・天満屋 

 8番のりば 降車専用

 9番のりば 中鉄・岡電バス

天満屋・真庭市・県庁・岡電高屋   

 10番のりば 両備バス

天満屋・県庁・西大寺 

 11番のりば 宇野バス

県庁・四御神・東岡山・瀬戸駅・長岡駅前・片上・八日市 

 12番のりば 宇野バス

赤磐市・美作市・法界院駅前・三野 

 13番のりば 岡電バス

天満屋・岡大・妙善寺・法界院駅前・榊原病院・三野・岡山理大東門 

《 PCVOL・OPKの紹介と例会日のお知らせ 》

 皆さんは音声パソコンを利用されているでしょうか。
 サピエ登録者数から推定すると、センター登録者の3分の1以上の方が利用されていると思われます。
 音声パソコンのユーザーはPCVOL・OPKに何らかの関わりを持たれたかもしれません。
 現在はともに月1回センターで活動をしています。
 
 毎回10名前後の会で、パソコンのスキルアップやサポート、情報交換などをしています。
 今年度のPCVOLの例会は6月以後11月をのぞき、すべて第2日曜日です。
 会場はエレベータで3階に上り、廊下に出て、すぐ左の部屋です。

 音声パソコンの体験をしたい、サポートを受けたいなど、様々なニーズに対応してくれます。
 また、同様の活動をしているOPKという会があり、メンバーもほぼ同じで、PCVOL同様様々な対応をしてくれます。
 この会の活動日も、日曜日で月1回催されていますが、第4日曜を原則としていますが、変ることもよくあります。
 OPKの開催日に関してはお問い合わせください。

 PCVOLの例会は10時から16時で、第2会議室です。

 以下例会日ですが、5月号でお知らせした日と11月が異なっています。

 6月12日、7月10日、8月14日、9月11日、10月9日、11月27日、12月11日、29年1月8日、2月12日、3月12日

 OPKの会場はPCVOLと同じですが、時間は午後1時~4時とPCVOLとは異なっています。

《 どうしてますか交流会の案内 》

 目の不自由な方と家族の集い

 “どうしてますか交流会”

 目が不自由になってこんな事が困った、何かいい方法ないかな。

 いろんな悩みや思いを聞いたり話したりしてみませんか。
 そんな思いで、集いの場“どうしてますか交流会”をほぼ毎月、開催しています。
 目の不自由な方、ご家族の方々、お気軽にご参加ください。

 1.日時 時間はすべて10時~12時です。

平成28年 6月26日(日)
      7月31日(日)
      9月 4日(日)
     10月30日(日)
     12月 4日(日)忘年会(後日のご案内)

 2.会場 ひまわり福祉会館2階

岡山市北区大供2-4-25  
電話 086-222-8619 

 3.対象 目の不自由な方と家族の方々

 4.参加費 200円

 5.申込み 不要

 主催 岡山県視覚障害を考える会

《 声 》   邪馬台国論争 1/2    センター利用者 K M

 邪馬台国はどこにあったのか。
 やまと朝廷と関係があるのか。
 この論争はいまだに決着がついていません。
 なぜ決着がつかないかといえば、それは邪馬台国のことを記した文献がたった一つしかないからです。
 しかも、その文献は日本のものではなく、中国三国時代のものです。
 誰でも耳にしたことのあるぎし倭人伝という歴史書です。
 この歴史書に記録されている邪馬台国の場所が曖昧なために、どこにあったのか絞り込むことができません。
 九州説と近畿説が有力ですが、これも学者の間で意見が分かれているようです。

 今回は、井沢元彦氏の「逆説の日本史古代黎明編」を拝借して、神話のかなたへタイムスリップしてみたいと思います。
 逆説の日本史は音訳されていますので、すでにご存知の方もおられると思います。

 邪馬台国といえば、真っ先に思い浮かぶのは女王・ひみこです。
 ひみこのひは、卑しいという字が当てられています。
 中国から遠く離れた劣等国の王という意味でこの字が恣意的に当てられたのだろうといわれています。
 日本史の立場から読めば、太陽の御子(尊敬を表わす御と子供の子)、または太陽神に仕える巫女と読めます。
 どちらにしても、個人の実名ではなく一種の称号ではないかと井沢氏は述べています。
 古代社会では、王の名を口にすることはもっぱらタブーとされていました。
 現代でも天皇の実名を口にすることはめったにありません。
 古代の呪術的社会では、決して許されない行為でした。
 禁を破った者は処罰されることもあったといいますから、第一級の機密事項だったと考えられます。
 ひみこの実名が後世に伝えられなかったのはそういう事情があったからでしょう。
 しかし、実名はともかく、ひみこの称号まで日本の文献に残っていないのはなぜでしょう。
 それはひみこの死に関係があると井沢氏は述べています。
 ひみこは自然死ではなく殺された。
 ライバルのくなこくとの戦争に負けた責任を問われて、あるいは皆既日食の責めを負わされて殺されたというのです。
 この時代、王の霊力が衰えると国の力も衰え、飢僅・疫病・天災などが起きると信じられていました。
 戦争に負けるのも霊力の衰えに原因があるとされました。
 王の権威は、危うい信仰に支えられていたのです。

 井沢氏は、戦争に負けたことと皆既日食が起きたことがひみこの死に深くかかわっているとしていますが、どちらかといえば日食のほうに重点を置いています。
 ひみこは太陽の子、または太陽神の巫女とされていたので、90年ぶりに起きた皆既日食は致命的なマイナス因子になったと言っています。
 ちなみに、天文学の知識とコンピューターがあれば、皆既日食が起きた年月日を過去にさかのぼって計算できるそうです。
 当時の人々の寿命は今よりもずっと短かったはずです。
 90年前に起きた皆既日食を目撃した人は一人もいなかったでしょう。
 仮に聞き伝えで知っていたとしても、得体の知れない不吉な出来事としか思えなかったでしょう。
 
 この時代でも中国のような文明国ではすでに高度な暦法があって、太陽と月の位置関係からある程度日食を予知できたといわれています。
 予知できれば、得体の知れない不吉な出来事と騒ぐこともありません。
 悲しいことに、邪馬台国にはそこまでの観測技術も暦法もありませんでした(中国から暦法がもたらされたのは、西暦553年とされています)。
 90年ぶりに起きた皆既日食は、強烈なインパクトをもってひみこの権威を失墜させたに違いありません。
 霊力が衰えた王は、呪術を重んじる古代社会では殺害されることもありました。
 その場合、新しい霊力に満ちた王を擁立して国を建て直すことになります。
 世界各地の文献にもそういう記録があるそうです。

 ぎし倭人伝には、西暦248年(計算によれば皆既日食が起きた年)に、ひみこが死んだと記されています。
 殺されたとは書かれていませんが、井沢氏は殺されたと断定的に述べています。
 ただし、ひみこ殺害説を最初に唱えたのは井沢氏ではありません。
 最初に唱えたのは松本清張氏です。
 彼は、倭人伝の漢文を読み解いて奇妙な記事があることに気づきました。
 ひみこがぎの国(中国三国時代の、ぎ・ご・しょくのうちの、ぎ)に使者を送って、くなこくとの戦争の模様を報告したのに対し、ぎの国の王も使者を遣わしてひみこの家来に書状を届け、激を作って告諭した(フレブミを作って告げ諭した)、とあり、続けて直訳では「ひみこ、もって死す」とあります。
 松本氏は、この「もって死す」が前段の文章の続きにしては唐突に聞こえることから、その間にあるべき言葉が脱落しているのではないかと推理しました。
 ぎの使者は、ひみこに死なねばならないと迫ったか、あるいは人心を煽ってひみこを殺害するようにしむけたのではないかというのです。
 言われてみれば、フレブミを作って告げ、諭した、よってひみこは死んだという文章は肝心な部分が意図的に省略されているように聞こえます。
 これを受けて井沢氏は、大国が小国の政権に介入することは珍しくないと補足しています。
 
 倭人伝では、ひみこが使者を送って戦争の模様を報告したとなっています。
 おそらく、戦況が不利になったことを報告したのでしょう。
 この記事を読む限り、ひみこが殺されたとすれば、やはり戦争責任を問われて殺されたという意味に聞こえます。
 しかし、井沢氏はなおも日食にこだわります。
 ひみこが死んだ年と皆既日食が起きた年はぴたりと一致する。
 これをただの偶然ですませるわけにはいかないと言います。
 次に皆既日食が起きたのは206年後の、西暦454年ですから、248年の皆既日食は、ひみこにとって最悪のタイミングで起きたことになります。

 邪馬台国は日本列島最大の連合国家だった。
 狗奴国は小さな国だった。
 常識的に考えて、大国がやすやすと小国に負けるはずがない。
 では、なぜ負けたのか。
 それは、日食が起きたからだ。
 太陽の巫女を王と仰ぐ兵士らは、突然太陽が見えなくなったことに驚き、うろたえ、戦意を失ってしまった。
 だから負けたのだ。
 ひみこの死を運命付けたのはやはり日食だと主張します。

 いずれにしてもひみこは殺害された。
 そして人々は、怨霊のたたりを恐れて彼女をあま照らす大御神として伊勢神宮に祭った。

 この時、ひみこの称号は神話から消されたというのです。
 あま照らす大御神は、その名が示すように太陽の神であり、太陽の子、または、太陽の化身とも考えられていたひみこのイメージと重なる、というのが井沢説の核心です。

 古代の怨霊信仰は、おおくにぬしのみことの物語にも見られます。
 古事記では、出雲の王がやまと朝廷に国を譲ったことになっていますが、実際は残虐なやり方で国を奪い取り、王を殺したに相違ない。
 その怨霊のたたりを恐れて巨大なやしろを建て丁重に祭った、というより封じ込めたのだろうと言っています。
 巨大なやしろとは、言うまでもなく出雲大社です。

 7月号に続く。

《 新刊案内》
 
 センターで新しく受け入れた図書をご紹介します。
 どうぞご利用ください。

 今月は、デイジーが11タイトル、点字が15タイトルです。

 なお、返却期限は資料が届いてからお手元に2週間です。
 延長を希望される場合は、ご連絡をお願いいたします。


●録音図書

◎一般向け図書

〇哲学(1タイトル)

書名 よく眠るための科学が教える10の秘密
リチャード・ワイズマン 著 木村 博江 訳
デイジー 9時間38分 
発行 文芸春秋 2015年
内容 睡眠が不足すると人はどうなってしまうのか。どうすれば質の高い眠りを得られるのか。熟睡のための具体的な方法、睡眠にまつわる現象の原因とその解決法、夢占いやフロイトの夢解釈、夢のセラピー効果などを紹介する。


〇自然科学(3タイトル)

書名 藤本蓮風経穴解説 増補改訂新装版
藤本 蓮風 著
デイジー 30時間23分
発行 メディカルユーコン 2013年
内容 北辰会方式の鍼灸で常用するツボ一穴一穴について、穴処・主治・応用・刺鍼を中心に解説を行い、絵図を随所に織り交ぜて示す。

書名 薬を使わない薬剤師の断薬セラピー 薬をやめれば、病気は治る
宇多川 久美子 著
デイジー 4時間8分 
発行 WAVE出版 2015年
内容 一生飲み続ける、薬を変えて飲み続ける、増薬する…。そんな生活、続けたいですか?「断薬」を実行する際のサポートとなるよう、「薬は必要のないものである」「薬が健康を害している」という事実を体験談とともに伝えます。

書名 日本型食生活を支える 食育活動の取組
すこやか食生活協会 編
デイジー 59分
内容 視覚障害者の方々に、様々な体験を通して、日本の食や農業への理解を深めていただくため、野菜の収穫と日本型食生活に欠かせない醤油の醸造所を見学する「現場体験ツアー」、収穫体験した野菜を利用した「料理教室」、醤油について詳しく学ぶ「学習会」の3つの行事を実施。


〇技術・工学(1タイトル)

書名 赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。
境 治 著
デイジー 6時間15分 
発行 三輪舎 2014年
内容 著者が取材した育児をサポートする活動を紹介するとともに、少子化を乗り越えて新しい社会をつくるにはどうすればいいかを考える。フェイスブックを通じて集まった赤ちゃんの写真も掲載。ブログをもとに書籍化。


〇産業(1タイトル)

書名 けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然
千松 信也 著
デイジー 8時間32分 
発行 リトルモア 2015年
内容 人里に動物が出没するのは森の荒廃が原因か?自然は「手つかず」が理想か?自然はカラダにいいのか?狩猟採集生活の中で綴った20編のエッセイを収録。


〇芸術・美術(1タイトル)

書名 銀盤の軌跡 フィギュアスケート日本ソチ五輪への道
田村 明子 著
デイジー 5時間19分 
発行 新潮社 2014年
内容 浅田真央はいかに這い上がったか、絶対王者チャンを追う高橋大輔の苦闘…。ついに最終決戦へ!フィギュア取材20年、第一人者のジャーナリストが選手達の知られざるドラマを描く、秘話満載ノンフィクション。


〇言語(1タイトル)

書名 日本語の考古学 岩波新書 新赤版 1479
今野 真二 著
デイジー 7時間41分 
発行 岩波書店 2014年
内容 「書かれた日本語」の原初の姿は?「源氏物語」を書いたのは誰?「改行」への意識はいつ頃生まれた?日本語学者・今野真二が、写本等の文献に残された微かな痕跡から日本語の姿を推理する。


〇文学(3タイトル)

書名 昼下りのギムレット 幻冬舎文庫
オキ シロー 著
デイジー 4時間57分 
発行 幻冬舎 1999年
内容 ギムレットを飲むと、僕はあの男のことを思い出す。グアムの熱帯の夜、彼に会わなければ、このカクテルのうまさも知らなかった。翌日、ジャーナリストの彼は戦場へ行った。再会を約束してから十数年、どこかで彼が生きているのを祈りながら、二杯目のギムレットを飲む…。表題作をはじめ、二十編のドライな男たちの物語。

書名 おおづちメモリアル
榊原 隆介 著
デイジー 4時間25分 
発行 作品社 2008年
内容 東大に入った兄貴分の修平がノイローゼ気味で自殺の気配を見せたり、親友がブラジルへ移住することが決まったり…。晋作の少年時代、昭和35年の夏から冬にかけて色んな出来事が起る。岡山を舞台にした少年の成長小説。

書名 シュレディンガーの哲学する猫 中公文庫
竹内 薫、竹内 さなみ 著
デイジー 7時間50分 
発行 中央公論新社 2008年
内容 ある日作家のもとに現れた、哲学者の言葉を語る不思議な猫。「語の意味とは何か?」「〈私〉は誰?」哲学の諸問題を、猫と作家が案内する。


●点字図書

◎一般向け図書

〇哲学(1タイトル)

書名 史上最強の哲学入門 「哲学」に挫折したすべての人に捧げます SUN-MAGAZINE MOOK
飲茶 著
点字 4巻 
発行 マガジン・マガジン 2010年
内容 哲学史とは、知の領域において、強さと強さをぶつけあい、研鑽してきた戦いの歴史そのものである。ソクラテス、デカルト、ニーチェ、サルトルなど、最高の真理を求めた32人の熱き哲学者たちを紹介する。


〇社会科学(1タイトル)

書名 おはなしのろうそく 29・30
東京子ども図書館 編
点字 1巻
発行 東京子ども図書館 2013年
内容 幼児から小学校中・高学年まで楽しめる世界各地の昔話・創作などを、実際に子どもたちに語った経験をもとに編集。スペインの昔話「明かりをくれ!」やチベットの昔話「ネズミの大てがら」ほか、全9話を収録。


〇技術・工学(1タイトル)

書名 みんなに役立つバリアフリー・ユニバーサルデザイン
桜雲会 編 西村 浩生、松井 進、森川 美和、吉本 浩二 著
点字 1巻
内容 健常者、障害者、高齢者等だれにでも使いやすい、バリアフリー・ユニバーサルデザインの施設や商品について解説。


〇産業(1タイトル)

書名 風俗店ここだけの話 文庫ぎんが堂
赤沢 竜也 著
点字 3巻 
発行 イースト・プレス 2012年
内容 愚痴を聞いたり、カネの相談に乗ったり、「本番」をめぐって言い争いをしたり、他店から女の子を強奪したり…。大阪・梅田の風俗店経営者だった著者が、風俗業界の出来事や、警察・ヤクザとの切った張ったの修羅場を語る。


〇文学(2タイトル)

書名 人生をひもとく日本の古典 3巻 つながる
久保田 淳、佐伯 真一、鈴木 健一、高田 祐彦、鉄野 昌弘、山中 玲子 編著
点字 3巻
発行 岩波書店 2013年
内容 この世の中で、他人とかかわりなく生きて行くことはできません。人とのつながりの中にこそ自分自身が存在しています。親子の絆、夫婦の機微、友情と信頼など、人と人とのつながり、さまざまな結びつきを古典文学の中に探ります。

書名 戦後占領期短篇小説コレクション 6 1951年
紅野 謙介、川崎 賢子、寺田 博 責任編集
点字 5巻 
発行 藤原書店 2007年
内容 敗戦から1952年にいたる時期に、文学にたずさわる者たちは何を描き、何を見ていたか。厳しい制約のなかで書かれた短篇小説を通して、戦後文学を問い直す。「イエスの裔」など8篇を収録。


◎児童向け図書

〇社会科学(2タイトル)

書名 思い出をレスキューせよ!“記憶をつなぐ”被災地の紙本・書籍保存修復士
堀米 薫 文
点字 1巻
発行 くもん出版 2014年
内容 思い出を救う。それは、被災した方が生きていくための大きな力となる…。東日本大震災の被災地や、全国のボランティア団体などで進められた、被災した写真を救う「写真洗浄」。その取り組みを、岩手県大船渡市に住む、一人の紙本・書籍保存修復士の姿を通して紹介する。

書名 「和食」って何? ちくまプリマー新書234
阿古 真理 著
点字 3巻
発行 筑摩書房 2015年
内容 2013年、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食:日本人の伝統的な食文化」。しかし和食とは何を指すのか。江戸時代から現代まで、資料をもとに和食の歴史を辿り、海外から来た食文化を取り入れることで大きく変化してきた「和食」と暮らしについて改めて考える一冊。


〇自然科学(1タイトル)

書名 患者さんが教えてくれた 水俣病と原田正純先生 フレーベル館ジュニア・ノンフィクション
外尾 誠 文
点字1巻
発行 フレーベル館 2013年
内容 「水俣病」という公害病に一生をかけて向き合った医師、原田正純先生。原田先生は、水俣病患者の家に通って診察を続けるうちに、認定されているよりもはるかに多くの人が同じ症状で苦しんでいることに気づきます。胎児性水俣病を発見し、亡くなる直前まで患者を支え続けた医師の半生を伝えます。


〇文学(6タイトル)

書名 しゅくだいさかあがり とっておきのどうわ
福田 岩緒 さく
点字 1巻
発行 PHP研究所 2014年
内容 夏休みもあと少しなのに、ゆうたは宿題のさかあがりがまだ1回もできていない。友達のさとしと一緒に練習をするけれど、何度やっても上手く回れず、さとしに八つ当たりしてしまう。ゆうたは、もうさかあがりなんてどうでもいいやって思ったけれど…。

書名 ベイジル ねずみの国のシャーロック・ホームズ 子どもの文学・青い海シリーズ27
イブ・タイタス 作 晴海 耕平 訳
点字 1巻
発行 童話館出版 2013年
内容 ねずみの国には、シャーロック・ホームズと同じくらい有名な、名探偵ベイジルがいます。彼はホームズが住むロンドンのベーカー街にあるねずみの町・ホームズテッドに住んでいました。ある時、ふたごの姉妹が誘拐される事件が起きます。ベイジルは、相棒のドーソン博士とともに、鮮やかな推理で犯人を追い詰めていきます。果たして犯人たちの本当の狙いとは?

書名 げんきなぬいぐるみ人形ガルドラ 世界傑作童話シリーズ
モドウィナ・セジウィック さく 多賀 京子 訳
点字 1巻
発行 福音館書店 2014年
内容 手づくりのぬいぐるみ人形ガルドラは、メリーベルのお人形。ある日、他のぬいぐるみたちと一緒に乳母車にのって、散歩に出かけます。ところが、途中で乳母車から落ち、思いがけない川の旅を楽しむことになります…。好奇心旺盛なガルドラの4つの冒険の物語です。

書名 お人形屋さんに来たネコ
ヨナ・ゼルディス・マクドノー 作 おびか ゆうこ 訳
点字 2巻
発行 徳間書店 2013年
内容 時代は20世紀初頭。ニューヨークの移民街に暮らすアナは11歳。ある日、パパたちの故郷ロシアから、いとこのタニアが来て、しばらく一緒に住むことになります。でもタニアはうちとけず、全くしゃべりません。同じ頃、近所で野良ネコが子ネコをうんで…。ネコの親子を見守りながら、いとこの力になろうとがんばる少女の姿をいきいきと描く物語。

書名 サマセット四姉妹の大冒険
レズリー・M.M.ブルーム 作 尾高 薫 訳
点字 5巻
発行 ほるぷ出版 2014年
内容 コーネリアの家の隣に引っ越してきた、作家のヴァージニア。その部屋は、床からヤシの木が生えたモロッコのリビングに、上品なフランスの応接間、読みきれないほど本があるイギリスの図書室…と、まるで外国のよう。そこで語られる、若きヴァージニアたちサマセット四姉妹の話にコーネリアはすっかり引きこまれていきます。

書名 はじめての北欧神話
菱木 晃子 文
点字 1巻
発行 徳間書店 2014年
内容 北ヨーロッパの国々に伝わる神話は、厳しい自然にはぐくまれた力強い物語。欧米の文学や音楽に大きな影響を与えている北欧神話を、初めてふれる子どもたちにも読みやすく書き直しています。神々にまつわる面白いエピソードを選び、「世界のはじまり」から「よみがえる大地」までを、時間の流れにそって描きます。